2001年のユーロ導入のころ、パリクラブやG7で長年一緒に仕事をしてきた、私のフランス国立行政学院(いわゆるエナ)の先輩にもあたる、フランスでも数少ない、大蔵省国庫局のエリート女性官僚、アンヌ・ル・ロリエ審議官が、来日した。
 ユーロのキャンペーン、フランスのユーロ建て国債のキャンペーンなどのためだが、そんな彼女を我々夫婦は、銀座の焼き鳥屋に招待したものでした。

 フランスのユーロ導入にかける情熱は凄くて、サルコジ大統領のカンヌでのG20締めくくりのスピーチを聞いていて、これだけは、フランスで政権交代が起きようと、エナ出身の官僚エリート支配が大嫌いな、移民初のフランス大統領が出ようと、不変なのはさすがです。国益をまもるためのヨーロッパ主要国の国内団結力は、総じて「団体主義」の日本よりずっと上です。

 しかし、ギリシャはどうなんだろう、ということは初めから言われてきました。オナシスに代表される海運や、観光、農業が主で、ユーロに入れば国内製造業は、ドイツ等からの輸入に押されまくることは見えていましたが、ユーロという通貨の「ユーフォリア」の恩恵で、どんどん借りまくり、オリンピックご本家開催バブルで、しばし隠蔽し、この持続可能なはずないやり方、最後は、財政赤字隠しの破綻で、市場に最悪のインパクト!
 (そういえば、大阪、、。大丈夫かな?府民の選択枝に、定石、定石の財政運営、隠さない、独裁的になりすぎない、と入れないと、明日はギリシャかも?
 国債の7割を海外が保有、海外からの借り入れ合計250兆円は、ギリシャの実力では、本来積み上げられなかった数字です。GDP30兆円、国家予算12兆円で、毎年3兆円返済。
 危機が表面化した2009年から2年間、事態が根本的に進展していないことが、ロシア東欧危機、ラ米危機のG7での処理を経験していた目からみると、深刻です。
  この国は、ほとんと2つの家族が、国政を担っており、透明性もなく、国民は独裁的な統治者が自分たちを苦しめている、という被害者意識しか持っていないということが、判明してきたからです。
 経済統合を行ううえで、一定レベル以上の民主主義国家でないと、相互サーベイランスをまもらせることはできない。
 東アジア経済統合が、現実には無理だし、すべきでもない理由としてよく挙げられる点です。

  ジャスミン革命も今年最大の出来事でしたが、ギリシャのデモや政治状況は、それに近いものがあり、政治家が借金で、公務員を人口の3割にして、割高な給与を与え、手あつい年金を50代から、という、国ごとサブプライムしちゃった状態。
 ギリシャ市民は、もう2年間も、EUやIMFが突きつけた「消費税23%,年金3割カット、公務員=人口の3割、の大幅給与カット」という現実を受け入れることを拒否し続けて、ロンドンスクールオブエコノミクスご卒業の、3世政治家、パパンドレウ首相が投げた爆弾が、「国民投票」。
 これが途上国ですと、中銀総裁と、財務大臣を国際金融機関が呼びつけて、プログラムを飲まないと、金を出さない、といって迫り、有無をいわさない。そういう場面に何度も立ち会ってきましたが、建前上先進国だと、ここまでになるんですね。
 しかし、本当の問題は、イタリアでした。私がG7の担当だったときのイタリア代表は、イタリア財務省国庫局長のマリオ・ドラギ氏、一番のハンサムでしたが、90年代から経済停滞、債務過大で、彼の直属スタッフに国際電話しても、午後3時にはいなくなってしまうし、殆どその課長一人しか大事なG7ペーパーの内容分かってないし、東京出張も一人で来て、「ローマにファックス送って」と、何度も彼の手伝いをしましたよ。
  その状況を15年続けて、首相はころころかわり、今の首相は、長くいるだけまし(俺は前任者から聞いてない、といえないから)。
  ギリシャ危機で、ユーロ圏第3位のイタリア国債の金利6,4%には、仏独も震え上がって、IMfに、監視してもらうことに。
 要するに、イタリア国内の政治的不満や社会混乱は、EUではもう手に余る、ということですよ。15年言い続けても、改善は一時的。マーストリヒトの条件もイタリアのために柔軟にしてあげたのですから。
 政治的にも地政学的にもはずせない場所にあり、第2次大戦では極右ができてしまった潜在的危険性のある重要国。ベルルスコーニ首相も、洗練された中東指導者かもしれないけれど、それを独仏からは言えない。
 ユーロは、事実上当初システムからみれば、崩壊しています。
 ドラギ欧州中央銀行新総裁が危機を受けてただちに利下げをしたのは、通貨マフィアの世界の中心に20年以上いる人だからで、これにより、ギリシャショックのその日の最悪は避けられましたが。

   to be continued