iPadから送信昨日、ベネズエラ大使館で式典参加し、中南米各国大使と挨拶交わしますうちに、アルゼンチン大使と話し込むことになり、今回のアルゼンチンの前例なきソブリン債務不履行の、『おかしさ』を、改めて再認識しました。
私は、日本政府女性初のG7、サミット代表団メンバーで、今でもその辞令は大切にとってあります。しかし、もっと地味でも実質的に意味がある女性初、は、その時期、パリクラブ債務削減交渉での大蔵省初の女性代表でもあったのです。

途上国の対外債務は公的なものが多く、支払い困難になると、フランス大蔵省国庫局が議長となってパリのフランス大蔵省で、何割カットで何年据え置き、何年返済、と条件を合意し、債務国はそれに従って全ての国に均等に支払います。議論は時に夜中を過ぎ白熱しますが、それは当然で、各国とも、納税者たる国民の怒りを背負ってますし。IMFと世界銀行が同席して、この債務国はギリギリいくらなら払えるのか、も試算しますので一定の信頼性があり、議会も説得しやすいのです。
アルゼンチンはパリクラブの、有る意味常連で、2001年の史上最大の破綻の後の合意形勢には時間がかかりました。2002年に財務省の政策評価室長として、ワシントンのIDBで中南米対外債務と日本の不良債権というテーマで講演した時、中南米全蔵相が集まったランチに同席し、みんなが困ったものだと話しているときに、当のアルゼンチン蔵相がけっこう平然としていて驚いた記憶がああります。
その後、アルゼンチンはパリクラブでの合意された支払いはしており、普通は、民間債務も、パリクラブ合意の直後に、民間銀行団債務交渉であるロンドンクラブで同じ削減スキームで合意されるのです(そうでないと債権者平等の原則上上手くない)、そしてその支払いもしていたと大使は言ってました、
ところが、この頃から跳梁跋扈していたハゲタカファンドが、民間のDistressed bondだけでなく、ソブリン=国家発行の債券も二束三文で買い集め、駄目モトで、支払いを求めて提訴したら、勝っちゃった。
今回、こうした国際金融の知恵、債務国が何とか国際市場に復帰でき、債権国も国内向け説明が成り立つ、パリクラブ、ロンドンクラブスキームを事実上すり抜け、自分だけ額面通りの支払いをうけられる、というズルい投資家の行為をNY地裁が容認し、最高裁が認めてしまったのです。
こういう判決がパリクラブ合意当事国の司法で許されるなら、各国は今後おいそれと債務削減には応じられなくなります。だって、合意せずに突っ張って米国の裁判所に訴えれば支払い命令がとれるのですから。

私がパリクラブメンバーの時の議長はトリシェでしたが、まずは財務官レベルのG7Dで早急にこの判決に関わらず、困った途上国を支援しながら可能な返済を公平に各国、各債権者が受けられるよう、
対策を話し合うべきです。