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片山さつきが委員長を務めます、再生可能エネルギー普及拡大委員会で議論を重ね、取りまとめた提言案が、本日10時開催の自民党政調審議会において、無事承認されました。



平成29年5月8日

再生可能エネルギーの更なる普及拡大に向けて(提言)
自 由 民 主 党
資源・エネルギー戦略調査会
再生可能エネルギー普及拡大委員会


はじめに
再生可能エネルギーは、地球温暖化対策だけでなく、新たな産業の創出や地方創生を通じたアベノミクスの推進に大きく貢献する。こうした認識に立ち、昨年、本委員会は「再生可能エネルギーの普及拡大に向けて~未来エネルギー開拓!GDP600兆円に貢献」として、以下の5本柱の提言を取りまとめた。
1 再生可能エネルギーとも融合して省エネルギーが新たなチャンスに
2 地域を救う地産地消型エネルギーシステム
3 電力新ビジネスがもたらすパラダイムシフト
4 新技術でフロンティアを拓く
5 固定価格買取制度の的確な運用と規制制度改革
こうした取組をさらに強化・加速し、新たな政策課題に的確に対応していくことが重要である。このため、本委員会は昨年の提言の第二弾として、以下の各施策を提言する。

再生可能エネルギーとも融合して省エネルギーが新たなチャンスに
徹底した省エネは、地球温暖化対策に資するだけでなく、省エネ投資の拡大による産業競争力の向上、住居やオフィスの快適環境の創出など我が国経済・社会に新たなチャンスをもたらす。このため、本委員会は中小企業、住宅・オフィス、運輸部門に特に重点を置いた対策を提言した。
1 省エネ補助金の拡充(中小企業向け設備単位での導入支援、中小企業省エネプラットフォームの全国展開)
2 サプライチェーン省エネの推進(大企業と中小企業が共同して省エネを行う取組の評価)
3 ZEH、ZEB、住宅リノベーションの拡大
4 交通流対策(エコドライブ、自動走行)

<更なる政策課題>
● 運輸事業者と荷主との連携による省エネの深掘り
Eコマース等の発展に伴う小口輸送や再配達の増加により、困難になっている運輸部門の大幅な省エネを実現するため、運輸事業者の努力に加えて、荷主との連携による省エネの取組を支援する新たな仕組みを構築すべきである。このための制度整備や荷主と消費者(受取人)との間のコミュニケーションなど円滑な受取に資する連携の促進、宅配ボックスの普及などの受取方法の多様化、国民運動の展開などに取り組むべきである。

地域を救う地産地消型エネルギーシステム
地域のエネルギーを地域で使う地産池消型エネルギーシステムは、地域の活性化、暮らしの質の向上、さらには災害等への対応の強靭化に資する。こうした観点から、昨年、本委員会は、
1 自治体主導の分散型エネルギーシステム構築
2 熱の活用、面的利用の推進
について提言を行った。

<更なる政策課題>
● 廃棄物バイオガスの潜在力の活用
廃棄物はどの地域にも存在する重要なエネルギー源である。これをいかした廃棄物バイオガス発電を推進することは、地産地消型エネルギーシステムの構築、さらには副産物を活用した地域振興にも貢献する。日本全国の市町村等が焼却処理している生ごみ等を、焼却せず全量バイオガス発電すると仮定した場合、約154万トン-CO2/年の削減ポテンシャルが見込まれるとの推計もある。廃棄物バイオガスの潜在力を引き出すため、産業廃棄物と一般廃棄物を同一施設において処理する場合の扱いを明確化するとともに、廃棄物の広域収集を促進するため、国においても、廃棄物由来のバイオガス利活用の重要性を市町村に周知徹底すべきである。

電力新ビジネスがもたらすパラダイムシフト
IoTを駆使したディマンドリスポンスや蓄電池の統合・遠隔制御などを通じた新たなエネルギーサービスを推進するため、昨年、本委員会は、
1 ネガワット取引市場(創設に向けたルール整備など)
2 VPP(新ビジネス創出に向けた通信規格・ルール整備など)
3 蓄電池戦略(系統用蓄電池の価格低減)
について提言した。

<更なる政策課題>
● 「上げDR」の構築
昨年の提言を踏まえ、2017年度に100万kW規模の取引が成約されるなど、ネガワット取引が本格を開始した。この取組をさらに発展させ、再生可能エネルギー電気を最大限に活用するため、発電の状況に応じて昼間の需要を増加させる仕組みを構築すべきである。このため、いわゆる「上げDR」(需要創出型ディマンドリスポンス)の構築を目指す実証実験を行うとともに、必要な法令上の手当も含め、ルールの整備を行うべきである。

新技術でフロンティアを拓く
省エネ・再エネを進める上で大きな鍵を握るのが技術開発である。さらに、2030年以降の長期的な展望を視野に入れ、水素や海洋エネルギーなどの次世代のエネルギー技術について、世界をリードしていく必要がある。こうした観点から、昨年、本委員会は、
1 革新技術の開発戦略(海洋・宇宙太陽光)
2 再生可能エネルギー由来水素
3 再エネ技術・省エネ技術の海外展開支援
について提言を行った。

<更なる政策課題>
● 福島再生可能エネルギー由来水素プロジェクトの早期実施
再生可能エネルギー由来の水素は、水素社会の実現に向けたクリーンな水素を確保する手段として、また再生可能エネルギーの出力変動対策として期待されている。このため、実証事業を通じてCO2フリー水素の低コスト化を実現する。特に、福島で進めている大規模な再エネ水素製造の実証については、福島の復興に向けた姿を世界に発信する観点から、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の際に福島産水素が活用されることを目指し、早期に実証設備の建設に着工すべきである。
● CO2フリー水素の利活用拡大に向けたルール形成
我が国において統一的なCO2フリー水素の考え方や、CO2排出量に係る算定方法は存在しない。産業界におけるCO2フリー水素の利活用を促進するため、その定義、インセンティブ設計について議論を進め、結論を得る。さらに、グローバルでのCO2フリー水素の流通拡大に向け、クリーン水素認証の国際ルール形成を図る。

固定価格買取制度の的確な運用と規制制度改革
昨年、本委員会は、再生可能エネルギーの最大限の導入と国民負担の抑制を両立させるための総合的な方策として、
1 改正FIT法の早期成立と的確な運用
2 系統制約の克服・運用の改善
3 指定制度に関する情報開示の徹底
4 規制制度改革・省庁間連携
5 将来の自立化に向けた取組
について提言を行った。新たな固定価格買取制度は本年4月に施行されたが、再生可能エネルギーの導入が増加する中で、新たな課題も浮上している。

<更なる政策課題>
● 地域と共生する再生可能エネルギーの実現
再生可能エネルギーが真に我が国に根付くためには、地域との共生が不可欠である。このため、地域の再生可能エネルギー推進体制を強化すべく、地元の太陽光発電の保守・点検事業者の情報収集・情報提供や、地元関係者と風力発電の合意形成を推進するため、地域協議会の設置を推進すべきである。
● 洋上風力発電の一層の推進
陸上風力の適地が限られる我が国においては、洋上風力は今後益々重要となる。このため、昨年5月の改正港湾法においてルールが整備された港湾区域において港湾法と電気事業法の審査基準の合理化を図るとともに、ルールが明確でない一般海域においてもルール化を検討し、利用調整を円滑化すべきである。
● 非化石価値取引市場の構築
非化石価値を顕在化し、取引を可能とすることで、小売電気事業者の非化石電源調達目標の達成を後押しするとともに、需要家にとっての選択肢を拡大しつつ、FITによる国民負担の軽減を図るため、非化石価値取引市場を創設すべきである。特に、FIT電気については、2017年度分の取引を来年夏までに行うよう、今後の詳細設計を急ぐ必要がある。
● 系統制約の克服に向けた更なる対策
本委員会は、昨年、系統制約の克服・運用の改善について提言し、情報開示や費用負担ルールなど、一定の前進を見たところである。しかし、再生可能エネルギーの導入拡大には、更なる対策が不可欠である。このため、連系線の先着優先ルールの見直し(間接オークション方式の導入)、系統接続ルールの柔軟化、公平かつ効率的な出力制御、系統運用技術の高度化などを積極的に進めるとともに、今後の系統増強の在り方についても検討を行うべきである。
● 再生可能エネルギー促進のためのファイナンス環境の整備
再生可能エネルギーに関心の高い需要家や地域住民の資金が再生可能エネルギー事業に投資され循環していくことが、再生可能エネルギーの更なる導入拡大には重要である。このためのファイナンススキームの構築など民間事業者による取組を積極的に推進する。
資源・エネルギー戦略調査会 再生可能エネルギー普及拡大委員会 開催実績
(平成28年4月の提言以降)

○平成28年10月26日
・ 平成29年度概算要求について
・ 改正FIT法施行に向けた準備状況について
・ エネルギー革新戦略への取組状況について
・ 東京電力パワーグリッド株式会社における電気使用量の通知遅延問題について
・ 10月12日に都内で発生した大規模停電について

○平成29年3月23日
・ バイオガスに関するヒアリング
- 西原茂樹 牧之原市長
- 市川環境エンジニアリング
・ 昨年の提言の検討状況について
・ 改正FIT法施行に向けた準備状況について

○平成29年4月18日
・ 貨物輸送事業者と荷主の連携による省エネについてヒアリング
- 日本物流団体連合会
・ ディマンドリスポンスを活用した再エネの導入拡大についてヒアリング
- アズビル株式会社

○平成29年4月28日
 ・ 廃棄物系バイオガス発電についてヒアリング
   - 若月和浩 長岡市 環境部長
   - 足立武彦 南但広域行政事務組合 環境課長
・ 『再生可能エネルギーのより更なる普及拡大に向けて』(提言案)について
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